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2024年 干支の話 辰
竜は古代中国では
実在すると考えられていた
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辰は、十二支の5番目にあたります。月は旧暦の3月、時刻は午前7~9時頃を指し、方位は東南東です。十二支のなかで唯一空想上の生き物である竜(龍)があてられていますが、その理由として、古代中国では竜が実在すると信じられていたからという説があります。
中国では、古代から恐竜の化石が多く発見されているため、その化石が「竜の骨」であると信じられていたというのです。漢方薬の原料にもなる
「竜骨」は、現在はナウマン象などの哺乳類の化石がほとんどですが、昔は恐竜の化石だったそうです。
また、古代中国の南部には6mを超える巨大なワニが生息しており、中国の文献に「竜の肉は柔らかく鳥肉に似ていた」「王が竜を飼い、貴族が狩猟の対象としていた」などの記述がみられることから、ワニが竜だと考えられていたのかもしれません。
竜は四神(青竜、朱雀、白虎、玄武)のひとつで水中に棲み、鳴き声で雷雲や嵐を呼んで、竜巻となって天に昇り飛び回るとされます。天候をも支配する強大な力を持つことから、辰年は変革や激動、出世、隆盛にかかわる年といわれています。
美しい声で鳴く
神社仏閣の天井に棲む竜
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神社仏閣のお堂の天井を見上げると、竜が描かれていることがあります。これは、竜神が水を司ることから、建物を火災から守る意味があるとされます。そして、天井に棲む竜の中には、美しい鳴き声(竜鳴)を聞かせてくれる「鳴き竜」がいます。
天井画の下で、手をたたいてみましょう。音が幾重にも共鳴して響き渡り、まるで竜が鳴いているように聞こえます。これは、フラッターエコー現象と呼ばれるもので、天井と床が平行で、音が反響しやすい硬質の木材を使用していること、天井に傾斜があったり木材が歪んだりすることで中央部がへこんだ状態になり、音が拡散しにくいことなどの条件下で起こります。
鳴き竜には、全国各地で出会うことができますが、特に「日本四方鳴竜」と呼ばれる、東の栃木県日光東照宮、西の京都府相国寺、南の長野県妙見寺が有名です(北の青森県竜泉寺は、残念ながら焼失しています)。竜鳴は、お堂の大きさや天井の高さ、使われている木材などによって、鈴を転がすような音や低く響く音など、さまざまです。竜の美しい声を聞く旅に出かけてみませんか。
竜の爪の数で
骨董の所有者がわかる
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竜は、あらゆる動物の頂点に君臨する最高の瑞祥とされ、その姿は中国の「三さ ん停てい九きゅう似じ 説」に則って描かれます。三停は、竜の首から腕の付け根、腕の付け根から腰、腰から尾までの3つの部分の長さが等しいことを意味し、天上、海中、地底の三界に通じるとされます。九似は、竜の9つの部位が他の動物に似ていることを指し、角は鹿、耳は牛、頭はらくだ、目はうさぎ、うろこは鯉、爪は鷹、掌は虎、腹は蜃しん(水竜の一種といわれる蛟みずち)、うなじは蛇といわれます。
しかし、爪の数だけが、絵によって5本、4本、3本と異なるのはなぜでしょうか。
中国では権力の象徴として、さまざまなものに竜が描かれていますが、明から清の時代までは、5本爪の竜は中国皇帝だけが使う特別なもので、皇族や貴族、地方の王などは4本爪、官吏などは3本爪と、明確な決まりがあったそうです。そのため、明から清時代の骨董や建造物は、描かれた竜の爪の数で、当時の所有者の位がわかります。もし、この時代の骨董や絵画をお持ちで、竜が5本爪ならば、中国皇帝のお宝かもしれません。